診療内容

当院の診療内容の一部を紹介します。
実際には来院時に担当医から十分な説明を直接受けていただき、個々に応じた検査や治療を行っていきます。

一般不妊検査

<女性>

<男性>

一般不妊治療

高度生殖医療

不育症外来

不妊治療説明書・同意書・問診票等はこちら

■当院における不妊症検査の実施時期

月経周期

■当院における不妊治療の一例

ステップ1
約6ヵ月間
初診時/不妊症についての解説、検査・治療の説明
基本検査/基礎体温測定、一般精液検査、頸管粘液検査、フーナーテスト (性交後試験) 、卵管通気検査、子宮卵管造影、経膣超音波検査
性交指導/時に排卵日測定のために尿LH定性検査を利用
   
ステップ2
約6ヵ月間
薬物療法による排卵誘発と黄体機能不全の是正
クロミフェン療法/経口の排卵誘発剤で排卵障害や黄体機能不全症に使用
黄体ホルモン療法/黄体機能の維持
HCG療法/排卵の促進、黄体機能の賦活
   
ステップ3
約6ヵ月~
1年間
排卵誘発(過排卵の誘発)/HMG-HCG療法
人工授精/洗浄濃縮精子による人工授精

一般不妊治療で1~2年経過しても妊娠しない場合は体外受精-胚移植(顕微授精を含む)への移行を考慮。ただし、年齢・不妊期間等、患者さんの状態により個別的に対応いたします。

卵管通気検査

精子や受精卵の通り道となる卵管の通過性や働きをチェックする安全で副作用もほとんどない検査で、通常、検査に伴う痛みもありません。通気検査後すぐに妊娠される方も多く、程度の軽い通過障害は通気を3~4回繰り返しているうちに妊娠される方も少なくありません。

子宮卵管造影検査

造影剤を膣から子宮の内腔に注入して、レントゲン撮影を行い、子宮内腔の形や卵管の通過性、卵管周囲の癒着の有無などをみる検査です。通常は月経周期の7〜10日目頃(月経が終わってしばらくした時期、排卵の前)に行います。多少の痛みを感じる患者さんもおられますが、不妊原因について多くの情報が得られ、非常に有用な検査の一つです。検査の翌日にもう一度レントゲン撮影を行い、造影剤のお腹の中への拡がりを調べます。

子宮鏡検査

直径3.1mmの細いファイバースコープを子宮頸部からゆっくりと子宮内腔へと挿入し、子宮頸管や子宮内腔を直接観察する検査です。不正性器出血の原因検索、子宮頸管や内腔の癒着や隆起性病変の有無の確認、また子宮内膜の機能を評価することもでき、不妊検査の一つとしても非常に有用な検査です。
検査の所要時間は数分間で外来で行います。当院の場合は使用する子宮鏡の直径が非常に細いため痛みを伴うことはほとんどありません。


子宮鏡検査実施模式図

頸管粘液検査

排卵が近くなると子宮頸管(子宮と膣をつないでいる管)は水様透明な粘液で満たされます。精子は良好な頸管粘液には容易に進入し子宮腔内へと入っていけますが、頸管粘液が少ない場合や濁っていると子宮腔内へ精子が入っていけず不妊となります。排卵頃の子宮頸管粘液を採取し、その量や色調、牽糸性、乾燥後の結晶形成などを観察します。

フーナーテスト(性交後試験)

排卵日の頃に診察の前日夜または当日の朝に性交し、子宮頸管粘液中の精子の状態を観察する検査です。もしこの検査で全く問題がなければ精液検査を省略することもできます。

■判定基準(運動精子数/400倍視野当たり)

15個以上 有意に妊娠率が高い
10~14個  
5~9個  
4個以下 不可 妊娠率は有意に低い

一般精液検査

男性因子による不妊は不妊症の約30%を占めると考えられており、非常に重要な検査です。精液量、総精子濃度、運動精子濃度、直進運動精子濃度、運動率、精子形態などを観察します。精液検査は通常は4~7日間の禁欲後に行います。特に危険性の無い検査ですので、早めに受けられるのがよいと思います。

■WHOマニュアルによる精液検査の基準値

精液量 2.0ml以上
pH 7.2以上
精子濃度 20×106/ml以上
総精子数 40×106/ml以上
精子運動率 運動精子(a+b)が50%以上
もしくは高速直進精子(a)が25%以上
(射出後60分以内)
精子正常形態率 Kruger’s Strict Criteriaで15%以上
精子生存率 75%以上
白血球数 白血球数 1×106/ml未満

人工授精

目的:良好精子を卵管へ送ること。
頸管粘液の分泌が悪いとき、頸管粘液が精子を通過させないとき、精子の数が少なかったり、運動が悪いときなどに行います。排卵日に合わせて、濃縮密度勾配法によって精液を洗浄濃縮し、良好な精子を選別して直接子宮内腔にゆっくりと注入します。普通に性交渉を持つより妊娠のチャンスが増えます。AIHで妊娠される患者さんの80%は5回以内に妊娠され、残りの20%のほとんども10回までに妊娠されます。したがって、AIHを行う回数は5回から10回までが適切とされています。それでも妊娠されない場合は体外受精-胚移植などの高度生殖医療へ移行することをおすすめします。

排卵誘発

目的:良好な卵胞を育てること。
クロミフェン、HMG-HCG療法などがあります。排卵が無かったり、良質な卵が出来ないとき、その原因を確かめて原因にあった作用の穏やかな内服薬の少量投与から始め、経過をみながら効果が不十分な時は漸次増量、それでも効果がみられないときは慎重に強力な排卵誘発剤を注射することになります。

体外受精(1) 体外受精−胚移植

体外受精ー胚移植とは、経膣超音波で見ながら経膣的に針で卵子を体外にとりだし、培養液の中でご主人の精子と奥様の卵子を受精させ、受精卵(胚)を子宮の中に戻す(移植)ものです。通常は排卵誘発を併用し、平均5-10個程度の卵子が採取出来、受精卵(胚)のうち1個を選び移植します。余った受精卵(胚)は凍結保存することができます。卵管性不妊、男性不妊、免疫性不妊、原因不明不妊、子宮内膜症の方に有効とされています。現時点では保険適応外の治療法なため、治療費が高くかかります。

体外受精(2) 顕微授精

精子の数が極端に少なかったり(乏精子症)、運動率が低かったり(精子無力症)すると、精子が卵子の中に入っていけず受精できないことがあります。体外受精をおこなうと受精の有無が確認でき、受精しない場合には顕微鏡で見ながら精子を卵子の中に注入し受精させること(卵細胞質内精子注入法、intracytoplasmic sperm injection, ICSI)ができます。また、無精子症(射出精液中に精子がいない)の場合は精巣または精巣上体から精子を採取して顕微授精を行い、受精させることができます。当院でも施行しております。

体外受精(3) 胚盤胞(Blastocyst)までの培養

通常の体外受精ー胚移植では、採卵後2日目または3日目に胚を子宮内へ移植するのが一般的です。しかし、これは生体内での生理的現象とは異なっています。
生体内では排卵後(採卵は排卵を意味します)5日目までは受精卵(胚)は卵管内にあり、その後胚盤胞の状態で子宮内に運ばれてきます。つまり、排卵から2日目また3日目の胚は生理的には卵管内にあり子宮内にはないはずです。これまでの培養液では採卵から2ー3日目までしか培養できず、生理的現象とのズレが問題でした。現在では新しい培養液の開発により採卵から5日目までの培養が可能になりました。
しかし、胚盤胞まで培養してから移植すると一卵性双胎の発生が増加するとの報告もあり、その点を十分考慮して胚盤胞培養を行うかどうか決定する必要があります。

体外受精(4) 2-step transfer(二段階胚移植)

「着床」のメカニズムは今だに十分な解明はされておらず、体外受精治療において十分な妊娠率が得られていない理由の一つです。
2-step transferとは体外受精治療の際に移植を2回に分けて行い、着床率を改善するための方法です。通常の体外受精の場合と同様に卵巣刺激ー採卵ー授精ー培養を行い、採卵後2日目又は3日目にまず1回目の胚移植を行います。そしてその際に移植せずに残った胚の培養を継続し胚盤胞まで育て、採卵後5日目に2回目の胚移植を行います。胚盤胞移植の前にあらかじめ胚移植を行っておく事によりそれらの胚が子宮内膜を着床しやすい状態に変化させ、着床率(妊娠率)の向上が期待される治療法です。ただし、受精卵のうち胚盤胞にまで発育する確率は約40-50%なため、通常は3個以上の受精卵が得られた方にしかこの治療法は行えません。当院では2001年からこの治療法を開始し、多くの方がこの治療法で妊娠されています。

体外受精(5) SEET法(子宮内膜刺激胚移植法)

2-step transfer(二段階胚移植)はとても有用な治療法ですが、総移植胚数は2個以上となり、多胎妊娠の危険性が高まります。そのため、2-step transfer(二段階胚移植)と同様な効果が得られ、尚且つ移植胚数を1個にするために開発されたのがSEET法(Stimulation of Endometorium-Embryo Transfer)です。先ず、胚盤胞培養を行った際の培養液を凍結保存しておき、その後、胚盤胞を移植する周期の胚盤胞移植2-3日前にその凍結保存しておいた培養液を融解し子宮に注入する方法です。胚盤胞培養を行った際の培養液の中には着床を手助けする物質が含まれていて、2-step transfer(二段階胚移植)の際の1回目に移植する胚と同様に子宮内膜を着床しやすい状態に変化させてくれると考えられています。当院では2010年からこの治療法を開始し、多くの方がこの治療法で妊娠されています。

体外受精(6) Assisted Hatching(AH)

胚は子宮内で着床前に透明帯からの脱出=Hatching現象を起こします。言い換えれば透明帯から脱出できなければ着床はできません。
その透明帯からの脱出=Hatching現象を補助する治療法がAssisted Hatching(AH)です。実際の方法にはいくつか種類があり、針を用いて機械的透明帯を切開する方法や酸性の液体を用いて透明帯を溶かす方法、レーザーを用いて熱で透明帯を溶かす方法などがよく行われます。当院では凍結胚の融解移植の際には原則全例に実施しています。

2005年4月より当院ではレーザー装置を用いたAHを実施しています。


Hatching開始


Hatching中


Hatching後

 

体外受精(7) タイムラプス(胚発育連続観察)

近年の技術の進歩により、胚の発育を自動で連続観察できる装置(Time-Lapse Embryo Monitoring System)が開発されました。この装置を用いることで、胚を培養器(インキュベーター)から外に取り出すことなく観察することができ(胚へのストレス軽減)、また胚の詳細な発育状態が分かり(高度な胚質評価が可能)、臨床成績向上に繋がると考えられています。当院では現在、同時に15症例をこの方法で観察できる体制を整えています。

体外受精(8) 紡錘体観察

特殊な2種類の偏光フィルターを用いると、卵子の「紡錘体」(ぼうすいたい、細胞質内にある細胞分裂を上手く行うために重要な役目を担う構造体)を観察することができ、それによって卵子の成熟度や質を評価することができます。また、これを用いることで顕微授精を行う際に「紡錘体」へのダメージを避けることができ、受精率や妊娠率の向上を図ることができます。当院では主に高齢な方や受精障害、異常受精がある方にこの方法を用いて大きな効果が得られています。

不育症外来

不育症とは

妊娠はされるものの流産や早産・死産を繰り返す状態を言います。誰でも一度妊娠すると約15~20%の率で流産を経験すると言われています。その理由の多くは胎児の染色体異常によるもので、決して病的なものではありません。流産を3回以上繰り返す状態を習慣流産と呼び、何か流産を起こしやすい原因があるのではないか検査する必要があります。また、妊娠中期以降の子宮内胎児死亡は珍しく、この場合は一回でもその原因を検査する必要があります。原因としては夫婦における染色体異常、子宮形態異常、内分泌異常、自己免疫異常、血液凝固異常、同種免疫因子などが想定され、スクリーニング検査を行うことにより個別化した治療が可能となります。
つまり基本的には初期流産を3回以上繰り返された方、妊娠中期以降の子宮内胎児死亡を1回でも経験された方が対象となります。妊娠初期の流産を2回経験された方に関しては、習慣流産とは言えませんので検査が必要なわけではありません。しかしながら、もし異常が見つかった場合には早期の対策が可能ですので、ご希望がある方にはスクリーニング検査を行うことができます。
流産は心身ともに非常につらい体験です。ましてそれが繰り返された場合、どうしてもまた同じことが起こってしまうと思いがちです。しかし、実際には適切な検査・治療を行えば次回妊娠がうまくいく確率を上げることができます。現代の情報化社会だからこそ、まず正しい情報を得ることが大切です。上記に該当しない方でも、不安な点や気になることがある方は受診していただければと思います。

不育症の検査について

当院では日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会報告をもとにしてスクリーニング検査を実施しています。まず初診時に検査項目、それぞれの料金などの説明書をお渡しします。子宮形態異常以外の検査はすべて採血のみで、結果は1週間程度で分かります(染色体検査のみ約3週間かかります)。

1. 子宮形態検査 
経膣超音波検査/子宮の形態異常(子宮奇形の有無など)、子宮筋腫や内膜ポリープの有無、両側卵巣・卵管の状態をチェックします。 
子宮卵管造影検査/不育症の方に関しては子宮の形態異常をより詳しく見ることが目的となります。同時に両側卵管通過性の有無や卵管周囲癒着の有無も検査できます。
2. 内分泌学的検査
PRL(プロラクチン)/下垂体から分泌されるホルモンで着床や妊娠維持に重要な役割を担います。不育症の方の約15%に高PRL血症が認められます。
LH(黄体化ホルモン),FSH(卵胞刺激ホルモン)/下垂体から分泌されるホルモンで卵巣予備能力の評価や多嚢胞性卵巣(PCO)の診断に必要です。PCOは流産との関係が示唆されています。
TSH(甲状腺刺激ホルモン), freeT3, freeT4/甲状腺機能の異常を調べます。甲状腺機能低下症・亢進症のいずれの場合も流産率が高くなります。
空腹時血糖/妊娠初期の高血糖状態は流産の原因となるばかりでなく、奇形児の発生頻度も高くなります。血糖値のコントロール後に妊娠されることをお勧めします。
E2(エストラジオール)/卵巣から分泌されるホルモンで初期妊娠の維持に必要なホルモンです。
P4(プロゲステロン)/排卵後に黄体から分泌されるホルモンです。子宮内膜を着床しやすい状態に変化させます。
3. ご夫婦の染色体検査
両親の染色体に流産しやすい異常がないか調べます。
4. 自己抗体・抗リン脂質抗体
抗リン脂質抗体とは後天的に産生される自己抗体の一つです。なぜ抗リン脂質抗体があると流産や死産が起こるかについてはいろいろな原因が考えられますが、主に自己抗体による絨毛間腔(胎盤の母体血液から酸素や栄養のやりとりをする場所)における血栓形成の亢進によって引き起こされていると考えられています。すなわち、このような重要な場所で血栓が生じ、血液循環が障害されれば、胎児(芽)に酸素や栄養が行き渡らなくなり、胎児死亡・流産が起こるのです。流産を繰り返し、抗リン脂質抗体が陽性であれば、抗リン脂質抗体症候群と診断され、全身に血栓ができやすいことが知られていますが、胎盤にも血栓を作りやすいため流産の原因となります。診断後は抗凝固療法により次回以降の流産リスクを減少させることが可能となります。保険適応の検査は抗核抗体、抗CL・β2GPI複合体抗体、ループスアンチコアグラント、抗CL抗体IgGですが、その他さまざまな抗体が報告されています。
5. 凝固因子活性
PT、aPTT、フィブリノゲン、第Ⅻ因子活性を測定します。
これらに異常がある場合、血栓症のリスクファクターになり、流産の原因になります。
6. 感染症検査
子宮頸管の炎症やクラミジア感染症は流早産のリスクとなります。
7. 同種免疫検査
通常体の中にウイルスなどの異物が入ったときに、それを排除する免疫反応が働きます。母親の卵子と父親の精子からできている胎児は、母体にとっては一種の異物ですが、体の中で異物と認識されることはなく子宮内で発育していく仕組みがあります(免疫学的妊娠維持機構)。その免疫反応がうまく働かない場合を同種免疫異常といい、流産につながってしまいます。しかし、同種免疫異常の検査・治療に関しては未だ明確に確立されていないのが現状です。当院ではNK細胞活性、Th1/Th2比を調べています。

不育症の治療について

検査結果により、治療法は異なります。検査結果の説明後、今後の治療法・次回妊娠時の流産率をどのくらい軽減できるかについては個別でお話することとなります。主なものは以下の通りです。

子宮形態異常 
先天性の子宮奇形(双角子宮、中隔子宮など)や、子宮筋腫、子宮腔内癒着症などが不育症の原因となり得ますが、基本的には手術療法となります。
内分泌異常
各種ホルモン検査で異常値であった場合、薬物療法で正常範囲に戻す治療を行います。場合により精密検査が必要なこともあります。
自己抗体・抗リン脂質抗体・凝固因子などの異常
検査の項で述べたように、これらの抗体が陽性の場合、絨毛間腔に血栓が生じ流産・死産を起こしやすくなりますので、抗凝固療法(血液を固まりにくくする治療)が基本となります。抗凝固療法には主に低用量アスピリン療法とへパリン療法の2種類があり、陽性となった抗体の種類・数・持続性、これまでの病歴などから、そのどちらか、または両方を行います。自己免疫疾患(膠原病など)を合併されている場合は、副腎皮質ホルモンを併用することもあります。
*低用量アスピリン療法:アスピリンは古くから解熱鎮痛剤として汎用されている薬です。このアスピリンを少量(80-100mg/日)服用すると、抗凝固作用があることがわかってきました。今では心筋梗塞や脳梗塞の再発予防薬としてバファリン81とバイアスピリン(100mg)は保険にも収載されています。
感染症
感染症の抗体が陽性であれば抗生剤の内服を行います。
同種免疫異常
当院では柴苓湯などの漢方薬内服をお勧めしています。