2000年10月18日 更新

不妊医療はどうあるべきか?

「とにかく妊娠すればどのような治療法でもよい、少しでも若いほうが成功(妊娠)しやすいのだから子供が欲しければ早くに体外受精ー胚移植を受けるべきだ」という意見を述べるひとがいますが、それは必ずしも正しくないと思います。まずは「より自然に近い、より侵襲の少ない治療法での妊娠」を目標にすべきだと考えています。決して体外受精ー胚移植や顕微授精などの高度生殖医療が危険な治療法と考えているわけでありませんし、それらが必要な方が数多くおられるのも事実です。当クリニックでも今年4月から体外受精ー胚移植を開始し既に多くの方が妊娠されています。しかし、それらの治療は時間的、身体的、経済的な負担を強いるものであることを考えれば、それらをしなくても妊娠できるひとにそれらの治療を行うのはやはり好ましくないと考えています。つまり、体外受精ー胚移植や顕微授精などの高度生殖医療が本当にその人に必要なのかどうかを見極めることが今の不妊医療には求められていると思います。
当クリニックには他の施設で体外受精ー胚移植を受けたが残念ながら妊娠せず、「本当にわたしには体外受精が必要なんだろうか?今後は失敗しても体外受精を続けるしかないのだろうか?」といった悩みをもった方が受診されます。その中にはその後当クリニックでの人工授精(AIH)で妊娠された方もおられますし、自然妊娠された方もいます。たしかにそのような方ばかりではなく、やはり体外受精以外に妊娠の見込みがなく、当クリニックでの体外受精で妊娠される方もいますが、腹腔鏡検査を受け、自分の身体のことを十分理解し、その後の治療の方向性を見い出していく方もおられ、様々です。
当クリニックは開設当初より、十分な説明を行い十分な理解を得てから患者さんひとりひとりに納得のいく検査・治療をしていくことを基本方針としていますが、その重要性を痛感する今日この頃です。