2021年10月25日 更新

「クレジット払い」について考えてみました。

今回のアンケートで、数人の方から「クレジット払いができるといいな」とのご意見をいただきました。

なので、この機会に「クレジット払い」についてよく考え(調べ)てみました。

クレジットカードのイラスト(番号なし・ゴールドカード)クレジットカードのイラスト(番号なし・シルバーカード・プラチナカード)

「クレジット払い」、確かにとても便利で、私も色んな場面(インターネットでの買い物や、高額な買い物など)でよく使っています。外国でも簡単に使え、海外旅行が好きな私にとっては、とってもありがたい存在です。(昔は「トラベラーズチェック」を使っていました。皆さんは使われたことありますか?旅行者用の小切手で、クレジットカードの普及により、2014年に販売終了になったようですね。)

既に皆さんよくご存知のことでしょうが、現金で支払いされる場合は、その支払いに関わるのは患者さんと当院の二者だけですが、クレジットカードによる支払いの場合は、患者さんと当院、プラス「カード会社」の三者が関わることになります。

「クレジット払い」の大まかな流れは、

患者さんが当院の治療費を「クレジット払い」とすると、その情報を当院から「カード会社」に送り、(通常は、通信端末を用いてカード番号、名前等を送信)後日、「カード会社」はその治療費から「決済手数料」を差し引いた額を当院の銀行口座へ振込み、「カード会社」は「クレジット払い」となった治療費の全額を患者さんの指定した銀行口座から引き落とす

となります。

つまり、三者が関わることで、窓口での現金のやり取りが不要となる代わりに、「決済手数料」が発生し、患者さんが支払われたお金の一部は当院にではなく「カード会社」に入ることになります。

では、ここで出てくる「決済手数料」とはどのようなものなのでしょうか?

名前の通り、決済する際に「カード会社」が徴収するもので、取引額に対して3-10%の率で算出され、これは「クレジット払い」をする方(患者さん)ではなく、「クレジット払い」を受ける(当院)が支払う必要があります。また、「決済手数料」分を治療費に上乗せして請求することは一切禁止されています。

例えば、「決済手数料」が5%の「カード会社」のクレジットカードで、10万円の治療費を患者さんが「クレジット払い」された場合、「カード会社」からは当院へ5%の手数料(5000円)を差し引いた95000円が振り込まれ、一方、患者さんの口座からは10万円が「カード会社」によって引き落とされることになります。(銀行振込みの場合も、支払いに伴って振込み「手数料」が発生しますが、通常、振込み「手数料」は「支払額」に応じて変わる「クレジット払い」の「決済手数料」とは大きく異なり、「振込み額(支払額)」にほぼ関係なく(振込み額が3-5万円以上で少し上がる場合がある)一律220-440円程度で、支払う側が負担する場合が多いようです。)

治療費は、その治療に関わる様々な費用(薬剤費、材料費、設備費、人件費等)から算出、算定されたもので、当院の医療サービスを継続して提供して行く上で必要なお金で、治療を受けられた患者さん個々に治療内容に応じて負担していただいています。(保健適用の治療の場合、一部は自己負担、一部は保険でカバーされます。)

つまり、治療費を「クレジット払い」された場合、実際の治療にかかった費用に対して「決済手数料」分当院への支払いが足りないことになります。先程も述べましたように「決済手数料」分を治療費に上乗せして請求することは一切禁止されていますので、当院の医療サービスを継続して提供して行くためには、「決済手数料」分を別途追加でお支払いただく必要が生じてしまいます。

「自費診療」であれば、一律に「治療費」に予め「決済手数料」を上乗せすることは可能かも知れませんが、その場合は「クレジット払い」されない方にとっては余分に支払うことになってしまいます。(「自費診療」とは異なり、「保険診療」に「決済手数料」を上乗せすることはできません。ただし、オンライン診療の場合は「情報通信機器の運用に要する費用」の名目で、保険診療分の費用に医療機関ごとに任意に費用追加が可能となっています。)

では、このような仕組みの「クレジット払い」が、世界的にも、日本でも、広く普及しているのはどうしてなのか?

その理由は主に二つ考えられます。

一つ目は「商業」(主に営利目的)における「集客」に繋がるからだと考えられます。「お店」としては「決済手数料」を負担してでも、「お客さんを増やして、利益に繋げたい」と多くが考えているからだと思います。

お店での「クレジット払い」は、代金を支払う側からすると、現金を持ち歩く必要がなく、簡便に支払いが行え、場合によっては利用額でポイントが付与され、いいことだらけです。しかし「クレジット払い」を受ける側からしてみると、代金の一部を「カード会社」に支払うわけで、正直あまりよい方法ではないはずです。しかし、「あのお店はカードが使えるけど、あのお店はカードが使えない」となった場合に、カードが使えるか使えないは「集客」に大きく影響すると考えられます。なので、「決済手数料」を負担して「カード払いOK」とする方が、お店としてはよいのではないでしょうか。

二つ目は、「インターネットでの買い物」が近年急速に増えてきたことも影響していると思います。「インターネットでの買い物」は直接お店に行く必要が無く自宅で買い物ができ、私も買いたいものが既に決まっている場合やお店にはあまり置いていないものを購入する場合によく利用しています。「インターネットでの買い物」では当然、直接、現金のやり取りが出来ないので、まさに「クレジット払い」の出番となります。

ある調査によると、「商業」では80%以上のお店で普及している「クレジット払い」が、「医療」では10%以下で、しかも、「クレジット払い」できる医療機関のほとんどが「美容形成外科」、「歯科」だったそうです。「美容形成外科」、「歯科」はもちろん「医療」ですが、その全てではないものの、「自費診療」のみを行っている施設も多くあり、一部には「商業」的経営をされている場合もあり、「決済手数料」分を上乗せした価格設定が可能だろうと思います。

「医療」においても「商業」と同様にお金のやり取りがあり、似ている部分はありますが、今のままの仕組みの「クレジット払い」は「医療」、特に「保険診療」には適さない、と言うことだと思います。(オンライン診療では有用)

そして、当院が行なっている「不妊治療」は、一部「自費診療」の部分もありますが「保険診療」もたくさんあり、「子どもを授かりたい」との思いに応え、寄り添っていく「医療」であり、決して「商業」(営利目的)ではないので、「クレジット払い」の導入は現時点では「不可」とさせていただこうと考えています。

ご理解いただけると幸いです。