診療内容

ここでは当クリニックでの診療内容の一部を紹介しています。
実際には来院時に担当医から十分な説明を直接受けていただき、個々に応じた検査や治療を行っていきます。

        

一般不妊検査

    

当院での不妊治療の一例
 ステップ1(約6カ月間)
  初診時:不妊症についての解説、検査・治療の説明
  基本検査:基礎体温測定、一般精液検査頚管粘液検査フーナーテスト
       卵管通気通水検査子宮卵管造影、経膣超音波検査
  性交指導:時に排卵日測定のためにLHチェックを利用
 ステップ2(約6カ月間)
  薬物療法による排卵誘発と黄体機能不全の是正
   クロミフェン療法:経口の排卵誘発剤で排卵障害や黄体機能不全症に使用
   黄体ホルモン療法:黄体機能の維持
   HCG療法:排卵の促進、黄体機能の賦活
 ステップ3(約6カ月〜1年間)
  排卵誘発(過排卵の誘発):HMG-HCG療法
  人工授精:洗浄濃縮精子による人工授精

 一般不妊治療で1〜2年経過しても妊娠しない場合は体外受精-胚移植顕微授精を含む)への移行を考慮。ただし、患者さんの状態により個別的に対応致します。

一般精液検査

男性因子による不妊は不妊症の約30%を占めると考えられており、非常に重要な検査です。精液量、総精子濃度、運動精子濃度、直進運動精子濃度、運動率、精子形態などを観察します。精液検査は通常は4〜7日間の禁欲後に行います。特に危険性の無い検査ですので、早めに受けられるのがよいと思います。

     正常精液所見(WHO、1992年)
 
 精液量        ― 2N以上
 精子濃度       ― 1N中に2000個以上
 精子運動率      ― 前進運動精子50%以上、または直進運動精子25%以上
 生存率        ― 75%以上
 白血球        ― 1N中に100万個未満

頚管粘液検査

排卵が近くなると子宮頚管(子宮と膣をつないでいる管)は水様透明な粘液で満たされます。精子は良好な頚管粘液には容易に進入し子宮腔内へと入っていけますが、頚管粘液が少ない場合や濁っていると子宮腔内へ精子が入っていけず不妊となります。排卵頃の子宮頚管粘液を採取し、その量や色調、牽糸性、乾燥後の結晶形成などを観察します。

フーナーテスト(性交後試験)

排卵日の頃に診察の前日夜または当日の朝に性交し、子宮頚管粘液中の精子の状態を観察する検査です。もしこの検査で全く問題がなければ精液検査を省略することもできます。

     判定基準(運動精子数/400倍視野当たり)

  優    15個以上       有意に妊娠率が高い
  良    10〜14個
  可    5〜9個
  不可   4個以下        妊娠率は有意に低い

子宮卵管造影

造影剤を膣から子宮の内腔に注入して、レントゲン撮影を行い、子宮内腔の形や卵管の通過性、卵管周囲の癒着の有無などをみる検査です。通常は月経周期の10日目前後(月経が終わってしばらくした時期、排卵の前)に行います。多少の痛みを感じる患者さんもおられますが、不妊原因について多くの情報が得られ、非常に有用な検査の一つです。検査の翌日にもう一度レントゲン撮影を行い、造影剤のお腹の中への拡がりを調べます。

卵管通気通水検査

精子や受精卵の通り道となる卵管の通過性や働きをチェックする安全で副作用もほとんどない検査で、通常、検査に伴う痛みもありません。通気検査後すぐに妊娠される方も多くありますが、程度の軽い通過障害は通気、通水(検査よりも治療として実施)を3〜4回繰り返しているうちに妊娠される方も少なくありません。

排卵誘発

目的:良好な卵胞を育てることマクロミフェン、HMG-HCG療法などがあります
排卵が無かったり、良質な卵が出来ないとき、その原因を確かめて原因にあった作用の穏やかな内服薬の少量投与から始め、経過をみながら効果が不十分な時は漸次増量、それでも効果がみられないときは慎重に強力な排卵誘発剤を注射することになります。

人工授精Artificial insemination with husband's semen, AIH)

目的:良好精子を卵管へ送ること
頚管粘液の分泌が悪いとき、頚管粘液が精子を通過させないとき、精子の数が少なかったり、運動が悪いときなどに行います。排卵日に合わせて、濃縮密度勾配法によって精液を洗浄濃縮し、良好な精子を選別して直接子宮内腔にゆっくりと注入します。普通に性交渉を持つより妊娠のチャンスが増えます。AIHで妊娠される患者さんの80%は5回以内に妊娠され、残りの20%のほとんども10回までに妊娠されます。したがって、AIHを行う回数は5回から10回までが適切とされています。それでも妊娠されない場合は体外受精-胚移植などの高度生殖医療へ移行することをおすすめします。

非配偶者間人工授精(Artificial insemination with donor's semen, AID)

目的:良好精子を卵管へ送ること
ご主人が無精子症のために妊娠できない方に行います。人工授精(AIH)と同様に排卵日に合わせて、第三者(感染症、遺伝疾患などを検索し問題のない男性)から得た良好な精子を直接子宮内腔にゆっくりと注入します。この方法でも妊娠されない場合は非配偶者間の体外受精-胚移植などの高度生殖医療へ移行する必要があります。
尚、この治療は諸般の事情により本年末(2005年末)をもって終了することになりました。
初診の方は7月末で受付を終了させていただきます。ご了承の程、宜しくお願い致します。(2005.7.11)

子宮鏡検査Hysterofiberscopy, HF)

直径3.1mmの細いファイバースコープを子宮頚部からゆっくりと子宮内腔へと挿入し、子宮頚管や子宮内腔を直接観察する検査です。不正性器出血の原因検索、子宮頚管や内腔の癒着や隆起性病変の有無の確認、また子宮内膜の機能を評価することもでき、不妊検査の一つとしても非常に有用な検査です。
検査の所要時間は数分間で外来で行います。当クリニックの場合は使用する子宮鏡の直径が非常に細いため痛みを伴うことはほとんどありません。
   

子宮鏡検査実施模式図
当院使用子宮鏡ファイバースコープ(Olympus HYF Type XP)
 

体外受精(1)
体外受精ー胚移植(in vitro fertilization and embryo transfer, IVF-ET)

体外受精ー胚移植とは、経膣超音波で見ながら経膣的に針で卵子を体外にとりだし、培養液の中で御主人の精子と奥様の卵子を受精させ、受精卵(胚)を子宮の中に戻す(移植)ものです。通常は排卵誘発を併用し、平均5-10個程度の卵子が採取出来、受精卵(胚)のうち3個を選び移植します。余った受精卵(胚)は凍結保存することもできます。卵管性不妊、男性不妊、免疫性不妊、原因不明不妊、子宮内膜症の方に有効とされています。現時点では保険適応外の治療法なため、治療費が高くかかります。

顕微授精(microinsemination, intracytoplasmic sperm injection, ICSI)

精子の数が極端に少なかったり(乏精子症)、運動率が低かったり(精子無力症)すると、精子が卵子の中に入っていけず受精できないことがあります。体外受精をおこなうと受精の有無が確認でき、受精しない場合には顕微鏡で見ながら精子を卵子の中に注入し受精させること(卵細胞質内精子注入法、intracytoplasmic sperm injection, ICSI)ができます。また、無精子症(射出精液中に精子がいない)の場合は精巣または精巣上体から精子を採取して顕微授精を行い、受精させることができます。当クリニックでも施行しております。


icsi

体外受精(2)

2-step transfer(二段階胚移植)

 「着床」のメカニズムは今だに十分な解明はされておらず、体外受精治療において十分な妊娠率が得られていない理由の一つです。
 2-step transferとは体外受精治療の際に移植を2回に分けて行い、着床率を改善するための方法です。通常の体外受精の場合と同様に卵巣刺激ー採卵ー授精ー培養を行い、採卵後2日目にまず1回目の胚移植を行います。そしてその際に移植せずに残った胚の培養を継続し胚盤胞まで育て、採卵後5日目(1回目の移植後3日目)に2回目の胚移植を行います。胚盤胞移植の前にあらかじめ胚移植を行っておく事によりそれらの胚が子宮内膜を着床しやすい状態に変化させ、着床率(妊娠率)の向上が期待される治療法です。ただし、受精卵のうち胚盤胞にまで発育する確率は約50%なため、通常は4個以上の受精卵が得られた方にしかこの治療法は行えません。当クリニックでは平成13年11月からこの治療法を開始し、すでに多くの方がこの治療法で妊娠されています。

Assisted Hatching(AH)

胚は子宮内で着床前に透明帯からの脱出=Hatching現象を起こします。言い換えれば透明帯から脱出できなければ着床はできません。
その透明帯からの脱出=Hatching現象を補助する治療法がAssisted Hatching(AH)です。
実際の方法にはいくつか種類あり、針を用いて機械的透明帯を切開する方法や酸性の液体を用いて透明帯を溶かす方法、レーザーを用いて熱で透明帯を溶かす方法などがよく行われます。

aha1 aha2
   

Hatching開始

Hatching中

Hatching後
2005年4月より当院ではレーザー装置を用いたAHを実施しています。
  

胚盤胞(Blastocyst)までの培養

現在の体外受精ー胚移植では、採卵2日目または3日目に胚を子宮内へ移植するのが一般的です。しかし、これは生体内での生理的現象とは異なっています。
生体内では排卵後(採卵は排卵を意味します)5日目までは受精卵(胚)は卵管内にあり、その後胚盤胞の状態で子宮内に運ばれてきます。つまり、排卵から2日目また3日目の胚は生理的には子宮内にはないはずです。これまでの培養液では採卵から2ー3日目までしか培養できず、生理的現象とのズレが問題でした。新しい培養液の開発により採卵から5日目までの培養が可能になりました。
しかし、最近では胚盤胞まで培養してから移植すると一卵性双胎の発生が増加するとの報告があり、その点を十分考慮して胚盤胞培養を行うかどうか決定する必要があります。

blastocyst

経子宮筋層的内膜胚埋め込み法

towako

1、子宮頚管の変形・奇形・狭窄・屈曲などの通常行う経子宮頚管胚移植法が困難な症例
2、子宮外妊娠を繰り返している症例
3、卵管水腫などにより分泌物が多い症例
4、反復して(3ー4回)経子宮頚管胚移植法による移植を行い妊娠成立に至らない症例などに行います。
  
採卵時と同様に経膣超音波ガイド下に行いますが、ほとんどの場合麻酔は必要としません。