学会活動(2008.9.5更新)
ここでは、当院の学会での活動(発表内容、参加報告など)を紹介しています。
学会発表
| 第26回日本受精着床学会(2008.8.28-29、福岡) |
| 凍結融解卵子と凍結融解精巣内精子を用いて妊娠に成功した1例 医療法人 絹谷産婦人科クリニック ○平岡 謙一郎、淵脇 恩美、平岡 夏織、岡野 真一郎、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】凍結融解卵子と凍結融解精子を用いて妊娠に成功した報告は少ない。今回我々は凍結融解卵子と凍結融解精巣内精子を用いてICSIを行い、ホルモン補充周期下に胚移植し、妊娠に成功した症例を経験したので報告する。 【方法】症例は妻37歳、夫37歳。男性因子による原発性不妊のため体外受精の適応となった。事前の精液検査で乏精子症と診断されたため新鮮射出精子でのICSI を予定していた。排卵誘発はロング法により行い、経膣超音波ガイド下に19個の卵子を採取した。しかし、採卵当日に用手法にて精液を2回採取したが運動精子を確認出来ず、成熟卵子18個をガラス化法により凍結保存した。まず卵子を7.5%EG+7.5%DMSO溶液で15分間平衡し、次に卵子を15%EG+15%DMSO+0.5M Sucrose溶液に1分間浸漬した後、約1μlの凍結液と共にCryotopの先端部に載せ液体窒素中に投入した。後日、夫の精巣内精子採取術を施行し、ICSI可能な運動精子を確認できたためKS-VI保存液を用いて凍結保存した。その後、凍結融解卵子と凍結融解精巣内精子を用いてICSIを施行し、ホルモン補充周期下に胚移植した。卵子の融解は1.0M Sucrose溶液にCryotopの先端部を投入して行い、融解後の卵子を0.5M、0.25M、0.125M Sucrose溶液に各3分間、最後に0M Sucrose溶液に5分間浸漬し、2時間の回復培養後にICSIに供した。 【結果】卵子の凍結融解後の生存率は94%(17/18)、生存卵子と凍結融解精巣内精子を用いてICSIを行った結果、2PNが5個、3PNが3個、0PNが9個、正常受精と判断した胚の分割率は80%(4/5)であった。卵子融解後3日目に分割期胚2個をレーザーによる孵化補助を施行した後に子宮内へ移植した。胚移植後、21日目に行った経膣超音波検査で子宮内に胎嚢1個を確認し、28日目には胎児心拍動を確認した。現在、妊娠7週で妊娠継続中である。 【考察】凍結融解卵子と凍結融解精巣内精子を用いたICSIにより得られた胚は着床能を有していることが証明された。 |
| 第26回日本受精着床学会(2008.8.28-29、福岡) |
| 7日目胚盤胞の凍結保存に関する検討 医療法人 絹谷産婦人科クリニック ○平岡 謙一郎、淵脇 恩美、平岡 夏織、岡野 真一郎、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】7日目胚盤胞の凍結保存に関する報告は少なく、その有用性は明らかではない。そこで、今回我々は5日目、6日目、7日目胚盤胞の凍結融解胚移植の臨床成績を比較検討した。 【対象】患者の同意の上、2005年2月から2008年2月までに凍結融解胚盤胞移植を行った112症例130周期を対象に、5日目胚を移植した54症例66周期を5日目胚群、6日目胚を移植した47症例53周期を6日目胚群、7日目胚を移植した11症例11周期を7日目胚群とし、3群の凍結融解後の生存率、胚移植後の妊娠率、着床率および流産率を比較した。 【方法】胚盤胞の凍結は、保存容器にクライオトップ(北里サプライ)を用い、人工的胞胚腔収縮操作を併用したガラス化法により行った。胚盤胞の融解はホルモン補充周期下に行い、移植前に透明帯を完全に除去する透明帯孵化補助操作を施行した。回復培養後、胞胚腔の再拡張が認められた胚を生存と判定し、胚移植後の妊娠成立の有無は経膣超音波検査による胎嚢の確認で判定した。 【結果】5日目胚群、6日目胚群、7日目胚群の融解後の生存率はそれぞれ99%(104/105)、99%(78/79)、100%(16/16)、胚移植後の妊娠率は64%(42/66)、62%(33/53)、55%(6/11)、着床率は49%(51/104)、46%(36/78)、44%(7/16)、流産率は26%(11/42)、27%(9/33)、33%(2/6)となり、生存率、妊娠率、着床率および流産率いずれにおいても3群の間に統計学的に有意な差は認められなかった。 【考察】7日目胚盤胞は5日目、6日目胚盤胞と同等の着床能を持つことから、7日目胚盤胞の凍結保存は臨床上有用であることが示唆された。 |
| 第26回日本受精着床学会(2008.8.28-29、福岡) |
| 透明帯の開孔部の大きさが凍結融解分割期胚より発生した胚盤胞移植の臨床成績におよぼす影響 医療法人 絹谷産婦人科クリニック ○平岡 謙一郎、淵脇 恩美、平岡 夏織、岡野 真一郎、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 目的】透明帯孵化補助操作にレーザーを用いることで、透明帯に様々な大きさの穴を開孔することができる。しかし、透明帯孵化補助に適した開孔部の大きさは明らかではない。そこで、今回我々は透明帯の開孔部の大きさが凍結融解分割期胚より発生した胚盤胞移植の臨床成績におよぼす影響を後方視的に比較検討した。 【対象】患者の同意の上、2003年10月から2006年6月までに凍結融解分割期胚より発生した胚盤胞をホルモン補充周期下に移植した101症例101周期を対象とした。このうち、透明帯孵化補助操作を行っていない30症例30周期をコントロール群、透明帯に40μmの穴を開孔した40症例40周期をAH40M群、透明帯の外周の50%を開孔した31症例31周期をAH50%群とし、妊娠率、着床率および出産率を比較した。 【方法】凍結融解2日目胚あるいは3日目胚より発生した5日目拡張胚盤胞を移植した。透明帯孵化補助操作は、胚盤胞を0.2 mol/lスクロース溶液へ浸漬した後、レーザーを用い40μm(AH40M群)、あるいは、透明帯の外周の50%(AH50%群)を開孔した。胚移植後、妊娠成立の有無は経膣超音波検査による胎嚢の確認で判定した。 【結果】コントロール群、AH40M群およびAH50%群の妊娠率はそれぞれ17%(5/30)、43%(17/40)、74%(23/31)、着床率は10%(5/52)、27%(17/62)、52%(27/52)、出産率は13%(4/30)、38%(15/40)、65%(20/31)となり、妊娠率、着床率および出産率いずれにおいてもコントロール群に比べて、AH40M群(P<0.05)およびAH50%群(P<0.01)が統計学的に有意に高い値を示した。同様に、妊娠率、着床率および出産率いずれにおいてもAH40M群に比べてAH50%群が統計学的に有意に高い値を示した(P<0.04)。 【考察】透明帯の開孔部の大きさは凍結融解分割期胚より発生した胚盤胞移植の妊娠率、着床率および出産率に影響をおよぼし、開孔する穴は大きい方が臨床成績を改善することが示唆された。 |
| 第26回日本受精着床学会(2008.8.28-29、福岡) |
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ビデオディスカッション「卵子・胚の凍結」 |
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胚盤胞の凍結保存にガラス化法を用いることで、高い生存率が得られるようになった。しかし、当院のガラス化保存した胚盤胞移植の妊娠率は13%と、新鮮胚盤胞移植の妊娠率51%に比べて有意に低い値となった。この原因を探るため、新鮮胚盤胞とガラス化保存した胚盤胞をプロテアーゼ溶液に浸漬して透明帯が完全に溶解する時間を比較検討したところ、ガラス化保存した胚盤胞の溶解時間は120秒で、新鮮胚盤胞の溶解時間90秒に比べて有意に長い値となった。以上の結果より、ガラス化保存した胚盤胞は透明帯が硬化し、妊娠率向上には何らかの透明帯孵化補助をする必要があると考え、ガラス化保存した胚盤胞に対して透明帯孵化補助施行後に移植したところ、妊娠率は64%となり、新鮮胚盤胞移植の妊娠率と同等の成績が得られた。透明帯溶解試験の動画を中心に、当院で行っている透明帯孵化補助操作法を紹介する。 |
| 第26回日本受精着床学会(2008.8.28-29、福岡) |
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ビデオディスカッション「AH(アシステッドハッチング)」 |
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我々が行った検討により、胚盤胞の透明帯孵化補助において、開孔部の大きさは胚移植後の臨床成績に影響をおよぼすことが示唆された。この結果を基に、当クリニックで行っている胚盤胞に対する透明帯孵化補助操作の工夫点を、以下に示すと共に、動画を用いて紹介したい。 |
| 第49回日本哺乳動物卵子学会(2008.517-18、名古屋) |
| 演題名: 透明帯の開孔部の大きさが凍結融解分割期胚より発生した胚盤胞移植の臨床成績におよぼす影響 Effect of the size of zona pellucida opening on clinical outcome of frozen cleaved embryos that were cultured to blastocyst after thawing 医療法人 絹谷産婦人科クリニック ○平岡 謙一郎、淵脇 恩美、平岡 夏織、岡野 真一郎、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
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【目的】透明帯孵化補助操作にレーザーを用いることで、透明帯に様々な大きさの穴を正確に開孔することができる。しかし、開孔部の大きさは報告により異なり、透明帯孵化補助操作に適した開孔部の大きさは明らかではない。そこで、今回我々は透明帯の開孔部の大きさが凍結融解分割期胚より発生した胚盤胞移植の臨床成績におよぼす影響を後方視的に比較検討した。更に、凍結融解操作が透明帯硬化におよぼす影響も比較検討した。 |
| 第48回日本哺乳動物卵子学会(2007.5.27-28、山梨) |
| 演題名: ガラス化法により凍結融解したヒト7日目胚盤胞の胚移植により妊娠が成立した1例 医療法人 絹谷産婦人科クリニック ○平岡謙一郎、淵脇恩美、平岡夏織、絹谷正之、絹谷一雄 |
| 【目的】ヒト5日目あるいは6日目胚盤胞の凍結保存に関する報告は多くされているが、7日目胚盤胞の凍結保存に成功したという報告は殆どない。今回我々は、ヒト7日目胚盤胞をガラス化法により凍結保存し、融解移植にて妊娠に成功したので報告する。 【方法】凍結融解胚移植を行ったときの患者年令は妻35歳、夫42歳で結婚10年目であった。他院にて、2年間に人工授精を4周期、体外受精を2周期(2日目胚移植と5日目胚移植を1周期ずつ)、凍結融解胚移植を3周期(全て2日目胚)行うも妊娠に至らず、原因不明の原発性不妊として当院へ紹介となった。3回目の体外受精はロング法により卵巣刺激を行い、経膣超音波ガイド下に12個の成熟卵子を採取し、凍結保存しておいた夫の精子を用いた顕微授精により11個が受精した。二段階胚移植を予定していたが、5日目に胚盤胞が得られず、1回目の移植(2日目胚を1個移植)のみ行ったが妊娠には至らなかった。その際、残りの余剰胚10個の培養を継続したところ、6日目に1個、7日目に2個が拡張胚盤胞へ発生したため、ガラス化法により凍結保存を行った。20% Serum Substitute Supplement + Modified-HTFを基礎培養液として、まず拡張胚盤胞を7.5% Ethylene Glycol (EG) + 7.5% Dimethyl Sulfoxide (DMSO)溶液中で胚盤胞よりも一回り小さい直径のガラスピペットでピペッティングを行うことにより胞胚腔を完全に収縮させた。次に胚盤胞を15% EG + 15% DMSO + 0.5M Sucrose溶液の小滴(約1μl)と共に45秒以内にクライオトップの先端部に載せ、滅菌した液体窒素中に投入した。採卵から2ヶ月後、7日目胚盤胞を2個融解し、ホルモン補充周期下に融解胚移植を行った。融解は1.0M Sucrose溶液中にクライオトップの先端部を投入して行った。融解後の胚盤胞は0.5M Sucrose溶液に3分間、基礎培養液に2回各5分間侵漬している間に透明帯を完全に除去する透明帯孵化補助操作を行った。回復培養から2時間後、融解した7日目胚盤胞は2個共に胞胚腔の再拡張が認められ、生存が確認された。2個の融解胚盤胞を胚移植後、18日目に経膣超音波検査で子宮内に胎嚢2個を確認したが、胎児心拍動が確認できたのは1個のみであった。現在妊娠22週で経過は順調である。 【考察】我々の知る限り凍結融解したヒト7日目胚盤胞の胚移植による妊娠の報告は緩慢凍結法による1報のみで、ヒト7日目胚盤胞のガラス化法による凍結融解移植後の妊娠の報告はなく、本症例が初めての成功例と思われる。 【文献】Sills ES, et al.: Fertil Steril. 79, 424-427, 2003. |
| 第2回日本レーザーリプロダクション研究会(2007.3.4、東京) |
| 演題名: 胚盤胞移植におけるアシステッドハッチングの有用性(酸性タイロードとレーザーの比較検討) 医療法人 絹谷産婦人科クリニック ○平岡謙一郎、淵脇恩美、平岡夏織、絹谷正之、絹谷一雄 |
| 【目的】アシステッドハッチング (AH) は移植胚の透明帯を操作して、着床率を向上させる技術である。従来、当クリニックでは酸性タイロードを用いてAHを施行してきたが、2005年4月よりレーザーを用いる方法に変更した。今回我々は、この変更が胚盤胞移植の臨床成績におよぼす影響を調べたので報告する。【対象・方法】凍結融解初期胚より発生した胚盤胞および凍結融解胚盤胞に対して、酸性タイロードあるいはレーザーを用いたAHを施行し、移植後の臨床成績を後方視的に比較検討した。 【検討1】凍結融解初期胚より発生した胚盤胞に対して、酸性タイロードを用いて40μmの穴を開孔するAHを施行した20周期をT40群、レーザーを用いて40μmの穴を開孔するAHを施行した20周期をL40群、レーザーを用いて40μmより大きい穴を開孔するAHを施行した31周期をL>40群として、胚移植後の妊娠率および着床率を比較した。T40群、L40群、L>40群の妊娠率はそれぞれ45% (9/20)、40% (8/20)、74% (23/31)、着床率は28% (9/32)、27% (8/30)、50% (25/50) となり、妊娠率および着床率においてL>40群が他の2群に比べて有意に高い値を示した (P < 0.05)。以上の結果より、開孔する穴が大きい方が臨床成績を改善することが示唆された。 【検討2】凍結融解した胚盤胞に対して、酸性タイロードを用いて透明帯に40μmの穴を開孔するAHを施行した45周期をT40群、レーザーを用いて透明帯を除去するAHを施行した55周期をLR群として、胚移植後の妊娠率および着床率を比較した。T40群とLR群の妊娠率は42% (19/45) と65% (36/55)、着床率は30% (23/77) と55% (45/82) となり、妊娠率および着床率においてLR群がT40群に比べて有意に高い値を示した (P < 0.05)。以上の結果より、透明帯を除去する方が開孔するだけよりもより有効であることが示唆された。 【考察】AHにレーザーを用いることにより、安全に大きく開孔することや透明帯を除去することが可能となり、胚盤胞移植のAHには酸性タイロードを用いる方法よりも、レーザーを用いる方法がより有用であると考えられた。 |
| 第24回日本受精着床学会(2006.9.21-22、軽井沢) |
| 演題名: 凍結融解胚盤胞移植におけるassisted hatchingの有用性(透明帯の一部開孔と完全除去の比較検討) 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡謙一郎、淵脇恩美、絹谷正之、絹谷一雄 |
| 【目的】凍結融解胚盤胞のassisted hatching(AH)には透明帯の一部を開孔する方法あるいは透明帯を完全に除去する方法が報告されているが、いずれの方法がより有用であるか比較検討を行った報告はない。そこで、今回我々は凍結融解胚盤胞に対して透明帯の一部を開孔あるいは透明帯を完全に除去するAHを行い、移植後の臨床成績の比較検討を後方視的に行った。 【対象】患者の同意の上、2003年11月から2005年11月までに凍結融解胚盤胞移植を行った90症例90周期を対象に、透明帯の一部を開孔するAHを施行した45症例45周期を開孔群、透明帯を完全に除去するAHを施行した45症例45周期を除去群とし、両群の妊娠率および着床率を比較した。 【方法】胚盤胞の凍結は、凍結容器にクライオトップ(北里サプライ)を用い人工的胞胚腔収縮操作を併用したVitrification法により行った。AHは融解直後、胞胚腔が収縮している間に行った。透明帯の開孔は直径10μmのマイクロピペットにて酸性タイロード液を吹き付け、35-40μmの穴を開けることにより行った。透明帯の除去はPulse 500μsec(Power 100%)のレーザー(Zilos-tk:Hamilton Thorn社、USA)を用い透明帯全周の60-90%に直径10μmの穴を連続的に開けた後、胚をピペッティングし、透明帯と完全に分離させることにより行った。回復培養後、胞胚腔の再拡張が認められた胚を生存と判定し、妊娠成立の有無は経膣超音波検査による胎嚢の確認で判定した。 【結果】開孔群および除去群における融解後の生存率はそれぞれ98.7%(77/78)および95.7%(67/70)、胚移植後の妊娠率は42.2%(19/45)および64.4%(29/45)、着床率は29.9%(23/77)および53.7%(36/67)となり、妊娠率および着床率において除去群が統計学的に有意に高い値を示した(P<0.03、P<0.01)。 【考察】凍結融解胚盤胞移植のAHには透明帯の一部を開孔する方法よりも、透明帯を完全に除去する方法がより有用であることが示唆された。 |
| 生殖バイオロジー東京シンポジウム(基礎セミナー、2006.7.16、東京) |
| 演題名: 着床率向上のための工夫 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡 謙一郎、絹谷 正之 |
| ヒト生殖補助医療において着床率を向上させるための有効な手段の一つに胚盤胞移植が挙げられる。近年、連続型組織培養液が開発されて以来、ヒト胚盤胞の作出が容易になってきた。胚盤胞移植は着床率が高いため、移植胚数を制限して多胎妊娠を防ぐ必要があり、余剰の胚盤胞が生じる症例が多くある。このことにより胚盤胞の安定した凍結保存技術が必須となっている。ヒト胚盤胞の凍結保存は1985年に初めての成功例が報告されて以来、緩慢凍結法が広く使用されてきた。しかしながら、緩慢凍結法による胚盤胞の凍結保存の有用性は報告されているものの、満足する成績の報告は少なく、胚盤胞移植の臨床応用における問題点とされている。2000年以降、緩慢凍結法に代わる方法としてVitrification法による凍結保存法が胚盤胞の凍結保存において臨床応用され、その有用性が多く報告されている。しかし、胚盤胞の発育ステージが進み、胞胚腔が大きくなる程(特に拡張期以降の胚盤胞)、融解後の生存率が低下することが問題となっている。胞胚腔が大きくなると、胞胚腔内部に凍結保護剤が十分に透過せず、胞胚腔内部に氷晶が形成され物理的に破壊されることが原因と考えられる。この問題点を解決するために、当クリニックでは胚盤胞の凍結保存を人工的に胞胚腔を収縮させる操作を併用したVitrification法により行い、その有用性を拡張期胚盤胞において確認後、同じ方法を脱出胚盤胞の凍結及び分割期で一度凍結した胚より発生した胚盤胞の再凍結に用いて高い生存率を得ることができ、妊娠・出産にも成功した。しかしながら、人工的胞胚腔収縮操作により生存率は改善されたものの、凍結融解後の形態が良好な胚盤胞を移植しても妊娠に至らないケースが見られ、その原因の一つとして、凍結処理による透明帯の硬化が考えられた。そこで、我々は融解胚盤胞の着床率向上のため透明帯の一部を開孔する透明帯孵化補助操作を行い、その有用性を確認し、透明帯を完全に除去する方法に改良したことにより更に着床率の向上が認められた。ここでは、これらの手法および臨床成績を示すことにより、当クリニックで行っている余剰胚盤胞の着床率向上のための工夫について紹介したい。 |
| 第47回日本哺乳動物卵子学会(胚培養士セッション、2006.5.27-28、東京) |
| 演題名: 当院におけるICSIの成績向上のための改良点 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡謙一郎、淵脇恩美、平岡夏織、絹谷正之、絹谷一雄 |
| 生殖補助医療において卵細胞質内精子注入法(intracytoplasmic
sperm injection: ICSI)は必須の技術であり、我々胚培養士はICSIにより1個でも多くの受精卵を得ることが求められている。ICSIを行うには卵丘細胞の除去、精子の卵細胞質内への注入が必要となり、侵襲的なこれらの操作がICSI後の卵子の生存率及び受精率に多大な影響をおよぼす。 当クリニックにおいてICSIによる治療を開始した平成12年度と本年度(平成17年度)のICSI後の生存率(生存卵子数/ICSI卵子数)はそれぞれ83.6% (418/500)、97.3% (995/1022)、受精率(受精卵子数/生存卵子数)はそれぞれ81.3% (340/418)、91.3% (908/995)となり、平成17年度の生存率及び受精率が平成12年度の成績に比べて有意に高い値を示した(P<0.01)。当クリニックにおける、この5年間の卵丘細胞の除去法、精子の卵細胞質内への注入法における変更点がICSI後の卵子の生存率及び受精率におよぼした影響を検討し、成績向上に結び付いたと思われる改良点について報告する。 |
| 第23回日本受精着床学会(2005.9.4-5、大阪) |
| 演題名: 融解分割期胚より発生した胚盤胞期胚の再凍結は有用か? 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡 謙一郎、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】近年、ヒト胚盤胞期胚の凍結保存に関する報告は数多くされているものの、前核期あるいは分割期で一度凍結し融解後に胚盤胞期に発生した胚の再凍結保存に関する報告は少なく、その有用性・安全性は明らかにされていない。今回我々は、分割期で一度緩慢凍結した胚を融解し、胚盤胞期まで発生した胚をVitrification法により再凍結し、その後融解移植を行い良好な成績が得られたので報告する。 【方法】患者の同意の下、緩慢凍結により凍結保存した分割期胚(Day 2またはDay 3胚)を融解後、追加培養し、胚盤胞移植により生じた余剰胚をVitrification法により再凍結保存し、融解後に胚移植を行い(再凍結群)、その有用性を凍結胚盤胞(Vitrification法により胚盤胞期にて一度だけ凍結・融解:コントロール群)での成績と比較した。凍結は、まず胚盤胞を7.5%EG+7.5%DMSO+20%SSS+PBS液でピペッティングにより胞胚腔を完全に収縮させた後、更に2分間平衡した。次に胚盤胞を約1μlの15%EG+15%DMSO+0.5M Sucrose+20%SSS+PBS液と共に45秒以内にCryotopの先端部に載せ、滅菌した液体窒素中に投入した。融解は1M Sucrose液にCryotopの先端部を投入して行った。融解後の胚盤胞は0.5M Sucrose液に3分間、20%SSS+PBS液に2回各5分間侵漬し、3時間の回復培養後に胚移植を行った。融解後、胞胚腔の再拡張が認められた胚を生存と判定し、妊娠成立の有無は経膣超音波検査による胎嚢の確認で判定した。 【結果】再凍結群およびコントロール群における融解後の生存率はそれぞれ92%(11/12)および99%(69/70)、胚移植後の妊娠率は57%(4/7)および46%(19/41)、着床率は42%(5/12)および33%(22/69)であった。 【考察】一度分割期にて凍結・融解後に胚盤胞期まで発生し、再凍結した胚盤胞は融解後の生存率、移植後の妊娠率および着床率は一度だけ凍結した融解胚盤胞の成績と同等であり、ヒト胚盤胞の再凍結は臨床上有用であることが示唆された。 |
| 第22回日本受精着床学会(世界体外受精会議記念賞候補演題、2004.9.2-4、旭川) |
| 演題名: ヒト脱出胚盤胞をVitrification法により凍結保存し妊娠出産に成功した1例 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡 謙一郎、平岡 夏織、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】ヒト脱出胚盤胞の凍結保存による妊娠報告は少ない。今回我々はヒト脱出胚盤胞をVitrification法により凍結保存し、融解移植にて妊娠出産に至った症例を経験したので報告する。 【方法】症例は妻31歳、夫31歳。卵管閉塞による続発性不妊の為、IVFの適応となった。分割期新鮮胚移植を1周期、分割期胚の凍結融解移植を1周期行うも妊娠には至らなかった。2回目のIVFでは6個の受精卵が得られ、Day 3に分割期胚を2個、Day 5に胚盤胞を1個移植(二段階胚移植)するも妊娠には至らなかった。その際、残りの余剰胚3個をDay 6まで培養したところ、1個が完全な脱出胚盤胞となった。我々はこれまで拡張期胚盤胞をピペッティングで人工的に胞胚腔を収縮させた後にVitrification法により凍結保存を行い、融解後の生存率95%(18/19個)、融解移植後の着床率44%(8/18個)、妊娠率60%(6/10周期)という成績を得ていた。そこで脱出胚盤胞に対しても同じ方法を用いて凍結保存を行った。まず脱出胚盤胞を7.5%EG+7.5%DMSO+20%SSS+PBS液で胚盤胞よりも一回り小さい直径のガラスピペットでピペッティングを行うことにより胞胚腔を完全に収縮させた後、更に2分間平衡した。次に胚盤胞を15%EG+15%DMSO+0.5M Sucrose+20%SSS+PBS液の小滴(約1μl)と共に45秒以内にCryotopの先端部に載せ、液体窒素中に投入した。融解は1.0M Sucrose液にCryotopの先端部を投入して行った。融解後の胚盤胞は0.5M Sucrose液に3分間、20%SSS+PBS液に2回各5分間侵漬し、2時間の回復培養後に胚移植を行った。尚、凍結・融解の操作は全て38℃のウォーマー上で行った。胚移植後16日目に子宮内に胎嚢1個を確認、妊娠38週で健常な女児の出産に至った。 【考察】我々の知る限りヒト脱出胚盤胞の凍結融解移植後の妊娠報告は緩慢凍結法による2報のみで、ヒト脱出胚盤胞のVitrification法による凍結融解移植後の妊娠出産の報告は無く、本症例が世界初の成功例と思われる。 |
| 第22回日本受精着床学会(世界体外受精会議記念賞候補演題、2004.9.2-4、旭川) |
| 演題名: ヒト脱出胚盤胞をVitrification法により凍結保存し妊娠出産に成功した1例 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡 謙一郎、平岡 夏織、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】ヒト脱出胚盤胞の凍結保存による妊娠報告は少ない。今回我々はヒト脱出胚盤胞をVitrification法により凍結保存し、融解移植にて妊娠出産に至った症例を経験したので報告する。 【方法】症例は妻31歳、夫31歳。卵管閉塞による続発性不妊の為、IVFの適応となった。分割期新鮮胚移植を1周期、分割期胚の凍結融解移植を1周期行うも妊娠には至らなかった。2回目のIVFでは6個の受精卵が得られ、Day 3に分割期胚を2個、Day 5に胚盤胞を1個移植(二段階胚移植)するも妊娠には至らなかった。その際、残りの余剰胚3個をDay 6まで培養したところ、1個が完全な脱出胚盤胞となった。我々はこれまで拡張期胚盤胞をピペッティングで人工的に胞胚腔を収縮させた後にVitrification法により凍結保存を行い、融解後の生存率95%(18/19個)、融解移植後の着床率44%(8/18個)、妊娠率60%(6/10周期)という成績を得ていた。そこで脱出胚盤胞に対しても同じ方法を用いて凍結保存を行った。まず脱出胚盤胞を7.5%EG+7.5%DMSO+20%SSS+PBS液で胚盤胞よりも一回り小さい直径のガラスピペットでピペッティングを行うことにより胞胚腔を完全に収縮させた後、更に2分間平衡した。次に胚盤胞を15%EG+15%DMSO+0.5M Sucrose+20%SSS+PBS液の小滴(約1μl)と共に45秒以内にCryotopの先端部に載せ、液体窒素中に投入した。融解は1.0M Sucrose液にCryotopの先端部を投入して行った。融解後の胚盤胞は0.5M Sucrose液に3分間、20%SSS+PBS液に2回各5分間侵漬し、2時間の回復培養後に胚移植を行った。尚、凍結・融解の操作は全て38℃のウォーマー上で行った。胚移植後16日目に子宮内に胎嚢1個を確認、妊娠38週で健常な女児の出産に至った。 【考察】我々の知る限りヒト脱出胚盤胞の凍結融解移植後の妊娠報告は緩慢凍結法による2報のみで、ヒト脱出胚盤胞のVitrification法による凍結融解移植後の妊娠出産の報告は無く、本症例が世界初の成功例と思われる。 |
| 第21回日本受精着床学会(世界体外受精会議記念賞候補演題、2003.10.2-3、東京) |
| 演題名: ヒト分割期胚の緩慢凍結におけるエチレングリコールの有用性 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡 謙一郎、平岡 夏織、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】各種実験動物胚の凍結保存には耐凍剤としてエチレングリコール(EG)を用いた緩慢凍結および急速凍結の有用性が報告されているが、ヒト胚の凍結保存においては急速凍結にはEGが用いられているものの、緩慢凍結には主にプロパンジオール(PROH)が用いられEGを耐凍剤として用いた報告は少ない。そこで今回我々はヒト分割期胚の緩慢凍結においてPROHとEGの成績を比較しEGの有用性について検討した。 【対象】2002年4月〜2003年3月の間、当クリニックにて自然周期またはホルモン補充周期下に凍結融解胚移植を行った26症例33周期を対象とした。このうちPROHを耐凍剤として用いて凍結保存した17症例23周期をPROH群、EGを用いて凍結保存した9症例10周期をEG群とした。PROH群、EG群の患者平均年齢は33.6±5.3歳v.s.32.0±3.8歳、凍結前の良好胚率(Day 2では4細胞期以上、Day 3では6細胞期以上でVeeckの分類grade 1,2の胚)は68.8%(44/64)v.s.64.0%(16/25)であった。 【方法】凍結液は最終濃度1.5M PROHまたは1.4M EGを含む20%Serum Substitute Supplement+0.1M Sucrose+リン酸緩衝液を用い、胚をストローに封入後、液体窒素バス式のプログラムフリーザーを用いて緩慢凍結を行った。融解は5段階希釈にて行い、融解後、割球の生存率が75%以上の胚を生存胚と判定した。 【結果】PROH群、EG群の融解後の生存率は56.3%(36/64)v.s.84.0%(21/25)、融解胚移植における着床率は5.6%(3/54)v.s.25.0%(6/24)、妊娠率は13.0%(3/23)v.s.50.0%(5/10)となり生存率、着床率および妊娠率いずれにおいてもEG群がPROH群に比べて有意に高い値を示した(P<0.02、P<0.03、P<0.04)。 【考察】PROH群とEG群の成績を比較した結果、EG群で有意な生存率、着床率および妊娠率の上昇が認められたことから、ヒト分割期胚の緩慢凍結における耐凍剤としてEGは有用と考えられた。 |
| 第48回日本不妊学会(2003.10.1-2、東京) |
| 演題名: ARTにおける多胎妊娠発生に及ぼす因子の検討 絹谷産婦人科クリニック ◯絹谷 正之、平岡 夏織、平岡謙一郎、絹谷 一雄 |
| 【目的】ARTにおいて多胎妊娠の発生は解決すべき重要な課題の一つである.これまでは平成8年の日本産科婦人科学会の会告に基づき移植する胚の数は3個以内が原則とされてきているが,多胎妊娠が母児および周産期医療に及ぼす影響は深刻であり,日本においても移植する胚の数を2個以内に制限すべきとの意見もある.そこで今回我々はこれまでのARTによる妊娠例を解析し,多胎妊娠発生に及ぼす諸因子について検討した. 【対象】2000年4月より2002年4月の間に当クリニックで行ったART治療で臨床的妊娠が成立した93症例95周期を対象とした. 【方法】年齢,不妊期間,不妊原因,採卵数,受精卵数,移植胚数,採卵時血清エストラジオール値,胚移植時内膜の厚さ,過去の移植回数等について後方視的に検討した. 【成績】単胎妊娠66例,多胎妊娠29例(双胎24例,品胎5例)で,全体の多胎率は30.5%であった.年齢,不妊期間,採卵数,移植胚数,採卵時血清エストラジオール値,移植時内膜の厚さ,過去の移植回数は単胎妊娠と多胎妊娠との間に差異はなく,不妊原因もほほ同様の傾向を示したが,受精卵数が単胎妊娠5.6±3.3個,多胎妊娠8.3±4.5個と多胎妊娠例で有意に多かった(P<0.01).また移植胚数別の検討では,3個移植時の単胎妊娠が35例,多胎妊娠21例(双胎18例,品胎3例)で多胎率が37.5%と最も高く,そのうちの19例(90.5%)は受精卵が4個以上の症例であった. 【結論】受精卵数は多胎妊娠発生に影響を及ぼす重要な因子と考えられ,受精卵が多く,移植するための良好な胚を選別できる症例では移植胚数を2個以内に制限するこは多胎妊娠予防において有用と考えられた.しかし受精卵数の少ない症例では移植胚数を制限することは妊娠率を低下させる可能性があり,個々の症例を慎重に検討し移植する胚の数を決定することも重要と考えられた. |
| 第47回日本不妊学会(2002.10.3-4、岐阜) (岐阜長良川の鵜飼い風景) |
| 演題名: ART反復不成功例における二段階胚移植法の有用性に関する検討 絹谷産婦人科クリニック ◯絹谷 正之、平岡 夏織、平岡謙一郎、絹谷 一雄 |
| 【目的】近年、ARTにおいて二段階胚移植法(以下、2-step
ET)が着床環境を改善し 、有用との報告がなされている。一方、ART反復不成功例に対する確立された治療法はない。そこで今回我々はART反復不成功例に対して2-step
ETを施行し、その有用性について検討した。 【対象】当院にて2000年10月〜2002年4月の間、受精卵が4個以上で、過去に3回以上新鮮胚移植を施行するも妊娠に至らなかったART治療の内、同意の得られた24症例31周期を対象とした。このうち通常の移植のみで2-step ETを施行しなかった症例(19症例26周期)をconventional-ET群、2-step ETを施行した症例(5症例5周期)を2-step ET群とした。conventional-ET群と2-step ET群の患者平均年齢は34.0±3.6歳v.s.33.6±3.9歳、過去の平均移植回数は4.4±1.9回v.s.6.4±2.7回、平均受精卵数は7.5±3.5個v.s.7.4±1.7個、平均移植胚数は3.9±1.5個v.s3.2±0.8個、平均移植時内膜厚は11.2±2.6mm v. s.12.0±1.7mmであった。 【方法】conventional-ETではday2に1回だけ胚移植を行い、2-step ETではday2にVeeck分類により形態学的に2番目と3番目に良好と判定した胚2個を移植し、その後day5に胚盤胞胚を1個または2個再度移植した。胚移植はEdwards-Wallace ETカテーテルを使用し 、経腹超音波ガイド下に施行した。培養液はday2まではHTF+10%SSS、day3以降はComplete Blastocyst Mediumを使用した。妊娠は経膣超音波検査による胎嚢の確認により判定した。 【成績】conventional-ET群と2-step ET群の着床率は12.7%(13/102)v.s.50.0%(8/16)、妊娠率は42.3%(11/26)v.s.80.0%(4/5)で、conventional-ET群に比べ2-step ET群が有意に高い着床率を認め(P<0.01)、妊娠率も高い傾向を示した。 【結論】今回の検討により2-step ETはART反復不成功例において有用な治療法であることが示唆された。今後は症例を重ねその有用性を更に検討して行く事が重要と考えられた。 |
| 第43回日本哺乳動物卵子学会(2002.5.31-6.1、和歌山) |
| 演題名: 酸素濃度がヒト初期分割胚移植(Day 2 , Day 3 )におよぼす影響 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡謙一郎、平岡 夏織、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的・背景】現在、ART(Assisted Reproductive
Technology)において胚の培養には主に5%CO2-5%O2-90%N2(5%O2)あるいは5%CO2-95%air(20%O2)の気相条件が用いられている。いずれの気相条件においても同様の妊娠率が報告されている。ヒトのIVFにおいて5%O2と20%O2を比較したところ初期分割胚移植において妊娠率に差が無いことが報告されているが1)、ヒトIVFにおいて気相条件の違いにより成績を比較した報告は少ない。そこで今回我々は、酸素濃度がヒト初期分割胚移植におよぼす影響について調べた。 【対象・方法】2001年7月〜2001年12月の期間、当クリニックにおいてART治療(IVF-ET、新鮮胚のみ採卵後2日目または3日目に移植)を施行した72周期を対象とした。このうち6%CO2-94%airの気相条件で培養をした41周期を20%O2群、6%CO2-5%O2-89%N2で培養した31周期を5%O2群とし、両群の成熟卵子当たりの受精率、受精卵当たりの分割率、分割胚当たりの良好胚獲得率、胚移植当たりの着床率および妊娠率を比較した。また、双方の気相条件での培養により治療経験のある同一症例11組29周期(20%O2:18周期、5%O2:11周期)についても比較検討した。良好胚の定義はVeeckの分類に従い、Day 2においては4細胞期以上でgrade1,2、Day 3においては6細胞期以上でgrade1,2とした。胚培養には両群共にHTF+10%SSSを用いた。6%CO2-94%airと6%CO2-5%O2-89%N2の気相条件で12時間平衡化した培養液のpH、pCO2、pO2はそれぞれ7.255 ± 0.013 v.s. 7.251 ± 0.013、44.175 ±1.290 mmHg v.s.45.850 ± 2.356 mmHg、156.625 ± 10.579 mmHg v.s. 65.800 ± 4.464 mmHgであった。 【結果】20%O2群と5%O2群の分割率は96.3%(184/191) v.s. 99.5%(181/182)、良好胚獲得率は26.6% (49/184) v.s. 45.9% (83/181)で、20%O2群に比べて5%O2群が有意に高い値を示したが、その他の受精率、着床率、妊娠率では両群に有意差は認められなかった(表1)。同一症例においては受精率、分割率、良好胚獲得率に有意差は認められなかった(表2)が、11症例中5症例が6%CO2-5%O2-89%N2の気相条件で培養することにより臨床的妊娠に至った。 【結論】ヒト初期分割胚の採卵後2〜3日目までの培養期間における6%CO2-5%O2-89%N2の気相条件の有用性が示唆された。 【文献】 1)Dumoulin, J.C.M.,Meijers, C.J.J.,Bras, M.et al.(1999) Effect of oxygen concentration on human in-vitro fertilization and embryo culture.Hum Reprod., 14, 465-469 |
| 第19回日本受精着床学会(2001.7.12-13、横浜) |
| 演題名: ART反復不成功例に対するassisted hatchingの有用性に関する検討 絹谷産婦人科クリニック ◯平岡謙一郎、平岡 夏織、絹谷 正之、絹谷 一雄 |
| 【目的】ARTにおけるassisted hatching(以下AH)の有用性はこれまでに数多く報告されている。しかし適応はまだ確立されておらず、当クリニックでも様々な症例にAHを施行している。今回はART反復不成功例に対するAHの有用性について検討した。 【対象】2000年4月〜2001年3月の期間、当クリニックにおいて3回以上胚移植を施行するも妊娠に至らなかった18症例21周期のART治療(IVF-ET、凍結融解胚移植)を対象とした。このうちAHを施行しなかった9症例11周期をコントロール群、AHを施行した9症例10周期をAH群とした。コントロール群とAH群の患者平均年齢はそれぞれ30.4±2.9歳v.s.34.1±5.1歳、過去の平均移植回数は4.6±0.8回v.s.7.5±3.4回、平均移植胚数は3.2±1.7個v.s.4.0±1.9個、平均移植良好胚数は1.5±1.7個 v. s.2.1±1.4 個、平均移植時内膜厚は11.2±2.4mm v. s.10.8±3.0mmであった。 【方法】AHは胚移植当日に施行した。ホールディングピペットで吸引保持した2〜8細胞期胚に3時方向から直径10μmのマイクロピペットにて酸性タイロード液を吹き付け、透明帯の外層を広範囲に溶解し、内層は温存するzona thinning法を用いた。尚、胚移植は採卵2日後または3日後に施行した。 【結果】コントロール群とAH群の着床率は5.7%(2/35)v.s.15.0%(6/40)、妊娠率はそれぞれ9.1%(1/11)v.s.50.0%(5/10)で、コントロール群に比べAH群が有意に高い妊娠率を示した(P<0.04)。 【考察】今回の検討により、ART反復不成功例に対してAHは極めて有用な治療法の1つであることが確認され、AHはART実施施設における必須の治療法と考えらえた。 |